認知症ケア専門士とは?
「認知症ケア専門士」とは、2005年に制定された比較的新しい資格で、一般社団法人日本認知症ケア学会が主催する民間資格です。認知症ケアに対する優れた学識と高度な技術、および倫理観を備えた専門技術士を養成し、日本における認知症ケア技術の向上ならびに保険・福祉に貢献する
ことを目的としています。認知症に関する様々な専門知識と技術を要する「認知症ケアのプロ
」と称される位置づけとして設定された資格です。 ■認知症ケア専門士が活躍できる職場って?
では、実際に認知症ケア専門士の資格は、どのような職場で実際に活かすことができるのでしょうか?2017年9月現在、日本全国で32,591人の認知症ケア専門士が活躍していますが、その主な職場をみてみると介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設)やグループホーム、有料老人ホームなど現場で直接認知症ケアに携わる福祉施設などで活躍している方が多いようです。
また、医療現場でもスタッフへ認知症ケアに関する知識や技術を伝えることができるため、看護師や医師などすでに医療系の資格を持ち活躍している方も、多く認知症ケア専門士の資格を取得しています。(日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士公式サイトより)
■認知症ケア専門士の資格を取得するメリットって?
今後も認知症高齢者数が増えていくことから、認知症ケア専門士の需要が高まっていることが分かりましたが、実際に認知症ケア専門士の資格を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
1.資格の知名度が高いから評価されやすい!
認知症ケア専門士は、“介護・医療・福祉業界において知名度が高い資格”のため、就職・転職時に評価される可能性があります。また、認知症の高齢者を支えるご家族からの質問や相談に対して、的確なアドバイスやプロフェッショナルな対応ができるようになるため、職場での評価も高くなりやすい傾向にあります。このようなことから認知症ケアを行う仕事に対してやりがいをより感じることができるでしょう。<<介護職の求人を探す>> 2.根拠のある知識をもとに認知症ケアが行える!
認知症ケア専門士認定試験を受験するにあたって学習すべきテキストの量は多く、その分認知症ケアに関する知識をたくさん身につけることができます。
また、更新が必要な資格であるため、単位の取得に必要な学会などへ参加することで常に医学的な裏づけをもつ“最先端の技術や理論をもとに認知症ケアにあたること”ができます。
デメリットは介護報酬の加算対象ではないこと!?
資格を取得するにあたり、一点デメリットとして考えられるのは認知症に関する介護報酬加算の算定要件の対象資格ではないということでしょうか。認知症ケア専門士は多くの施設で重宝され権威性のある資格ではあるものの、残念ながら現状では介護報酬の加算の対象にはなっていません。認知症に関する加算には・認知症加算・認知症ケア加算・認知症専門ケア加算などがありますが、いずれも認知症介護指導者研修や認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修など「国や自治体が行っている認知症介護指導者研修の修了者」の配置が算定要件となっており、民間資格の認知症ケア専門士は知名度は高いながらも算定要件には含まれていません。もし事業所の介護報酬加算を取ることも資格取得の目的に含まれるならば、認知症介護指導者研修からステップアップして資格を取得していくことをおすすめします。<詳しくはこちら>コラム「認知症ケアに携わるなら取るべき資格!認知症介護実践者研修ってなに?」 ■認知症ケア専門士の受験資格や受験方法、合格率は?
以下では、認知症ケア専門士の資格取得方法や認定試験の詳しい内容についてまとめていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
認知症ケア専門士認定試験の受験資格
認知症ケア専門士認定試験を受けるには、試験実施より過去10年の間に認知症ケアに関する施設、団体、機関などで認知症の方に携わる実務経験が3年以上あることが必要です。実務経験以外に、そのほかの資格の有無は関係ありません。
認知症ケア専門士認定試験の受験方法
ここからは、具体的な認知症ケア専門士認定試験の受験方法についてみていきましょう。
まずは「受験の手引き」の申込みを!
認知症ケア専門士認定試験を受けるためには、まず「受験の手引き」を申込む必要があります。
「受験の手引き」は電話かFAX、もしくはインターネットから申込みができ、料金は1部1,000円(税込)です。
手引きに記載の通り必要書類を揃えて送付し、受験料の払込みをして申込完了となります。
第1次試験と第2次試験ごとに受験申込みが必要!
認知症ケア専門士認定試験では、認定試験ごとに申込みが必要なため、それぞれの申込期間や必要書類の準備が遅れないよう注意が必要です。
第1次試験の申込期間は3月から4月頃で、受験料は3,000円×受験分野数(4分野まとめて受ける場合は合計12,000円)となります。
また、第2次試験の申込期間は8月から9月頃で、受験料は8,000円となります。
認知症ケア専門士認定試験の概要
認知症ケア専門士認定試験は、第1次試験(筆記試験)と第2次試験(論述・面接)に分かれています。例年、第1次試験は7月頃、第1次試験の合格者のみ第2次試験が12月頃に行われます。(第2次試験の論述試験の提出期限は8月から9月です。)
第1次試験の概要
第1次試験は筆記試験で、マークシート式の五者択一問題です。4つの分野から各50問ずつ、計200問が出題され、各分野70%以上の正答率で合格となります。
また、4分野すべてに合格することが第1次試験の合格ということになります。
出題分野 | 問題数 |
認知症ケアの基礎 | 50問 |
認知症ケアの実際1:総論 | 50問 |
認知症ケアの実際2:各論 | 50問 |
認知症ケアにおける社会資源 | 50問 |
合計 | 200問 |
( 参考:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士公式サイトより )
第1次試験は分けて受験できる
認知症ケア専門士の第1次試験は、分野ごとに受験することが可能です。
各分野の合格有効期限は5年間なので、働きながら1度に4分野を勉強するは大変…という方も「今回は2分野を受けて、来年は残りの2分野を受けよう」と計画を立てながら資格取得を目指せます。
第2次試験の概要
第2次試験は論述試験と面接試験に分かれており、具体的な試験内容は以下となります。
論 述:認定委員会より出題される事例問題に対する論述
※事前に設けられた提出期間内に、第2次試験受験申請書類と一緒に郵送する
面 接:6人1グループとなって、ディスカッションとスピーチ(約20分)
論述試験のポイント
論述試験でみられているのは「答える内容」と「認知症ケア専門士としての適性」です。与えられた問題に対しての対処方法、そしてなぜその対処方法を選んだのかなど、あなた自身の考え方をみられます。上記のポイントを意識しながら、規定の文字数に収めるようにしましょう。
面接試験のポイント
自分なりの言葉で意見を言う
「人として」や「専門職として」の考えを伝える
周囲の話も聞く、仲間が話しやすい環境を作る
面接試験のポイントは、正しい答えを言うことではなく、「自分ならどのように考え、どのように行動するか」を述べることです。
6人1グループで行うので「もしもここが職場だったらどう振る舞うか?」という人との関係も踏まえつつ答えていくことが大切です!
第2次試験合格の5要件
第2次試験は、論述と面接の総合評価で以下5つの要件を満たした場合、合格となります。
適切なアセスメントの視点を有しているか
認知症を理解しているか
適切な介護計画を立てられるか
制度および社会資源を理解しているか
認知症の人の倫理的課題を理解しているか
認知症ケア専門士認定試験に合格したら、登録申請が必要!
認定試験に晴れて合格した場合、認知症ケア専門士として資格が交付・認定されるためには正式な手順に従って登録申請が必要です。また、登録申請料は15,000円となっています。
認知症ケア専門士認定試験の合格率
ここからは、気になる認知症ケア専門士認定試験の合格率についてみていきましょう。
第8回(2012年)から第13回(2017年)の合格結果を踏まえてまとめた以下のグラフから分かるように、認知症ケア専門誌認定試験の合格率は約48%から60%となっており、比較的難易度は高めといえます。
認知症ケア専門士は民間資格ではありますが、難易度・専門性が高いため、しっかりと勉強をして知識をつける必要があります。
( 参考:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士公式サイト 認定試験合格状況より )
■ 認知症ケア専門士認定試験の勉強法は?
では、認知症ケア専門士認定試験の合格を目指して勉強するには、どのような対策をすればよいのでしょうか?ここからは、認知症ケア専門士認定試験に向けた勉強方法をいくつかご紹介します。
公式の「認知症ケア標準テキスト」で勉強する
まずは「認知症ケア標準テキスト」を使って勉強することをおすすめします。なぜなら、認知症ケア専門士認定試験の第1次試験は「認知症ケア標準テキストに準じた内容」が出題範囲となっており、必ず勉強した内容が出題されるからです。
また、認知症ケア標準テキストには医療・看護・介護・福祉の内容がバランスよく網羅されているため、身につけられる知識が増え、試験勉強で学んだことをそのまま職場で活かすことできます。
問題集で問題数をこなしていく
認知症ケア専門士認定試験には、過去問題集がありません。
また、実際の試験では、試験終了後に解答用紙とともに問題用紙も回収されてしまうため、なかなか過去の問題を探すことは困難です。
しかし、過去の受験者の情報などをもとにして作られた問題集はいくつか発売されています。
「認知症ケア標準テキスト」で勉強し、問題集で繰り返し問題を解くことで、より実践に近い対策勉強となり問題にも慣れることができます。
様々な問題集がありますが、問題ごとに分かりやすい解説がついているものを選ぶのがおすすめです。
受験対策講座を受講する
短期間で徹底的に学びたい、専門の講師に教えてもらいたいという方におすすめなのが受験対策講座です。
この講座は毎年5月から6月頃に2日間にわたって、全国2か所(横浜・京都など)で開催されており、「認知症ケア標準テキスト」をもとに分野ごとの重要ポイントを講義形式で学べます。
また、本番形式の模擬試験も受けることができ、模擬試験終了後には講師による問題の解説も行われるため、2日間で効率的に試験勉強をすることができます。
参加費は15,000円ですが、講座内で使用する「認知症ケア標準テキスト」の費用や交通費・宿泊費は含まれていないため、そのほかの勉強法より費用はかかってしまいます。
すきま時間にアプリで勉強する
認知症ケア専門士認定試験の内容に対応した勉強アプリは、わずかですがあります。
アプリのほとんどは有料ですが、公式テキストや問題集を購入するより安く、なによりも空いた時間にどこでも勉強できるため、忙しくてなかなか勉強時間を作れない方にもおすすめです。
■認知症ケア専門士の資格は、更新が必要!
認知症ケア専門士は、生涯学習の機会提供や認知症ケア従事者の技術向上を目的としているため、資格を維持するためには5年ごとの更新が必要です。
論文の投稿や発表、学会・講演などへ参加するごとに2から8単位を取得でき、5年以内に30単位以上を取得することで更新が可能です。
万が一、更新申請を忘れてしまった場合は、認知症ケア専門士認定試験の受験からやり直しとなってしまうため注意が必要です!
認知症ケア専門士の資格更新費は10,000円
更新申請期間内に、更新費の振り込みと必要な申請書類を送付することで、更新が可能です。
学会などへの参加費は約3000円から10000円/回
単位取得には学会やプログラムなどへの参加が必要ですが、1項目につき約3000円から10,000円の参加費を要するようです。
開催地によっては交通費も必要になりますので、参加する項目を事前に確認しておくことが大切です。
30単位に満たない場合は、更新の保留が可能!
■まとめ
認知症ケア専門士の資格は、認知症関係の資格の中で最も実用的な資格といえます。
勉強量も多く、試験期間も約5ヶ月と長いため労力がかかりますが、その分得られる知識やすぐに活かせるスキルも多い資格です。
また、認知症ケア専門士の資格取得者の需要は今後ますます高まる可能性が高いため、医療や介護、福祉の分野でより活躍したいと考えている方はぜひ資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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