介護職員の介助業務のひとつに「清拭介助」というものがあります。
蒸しタオルなどで体を拭いて清潔に保つことです。
利用者の方が入浴ができない場合に必要となる清拭介助ですが、慣れるにはある程度の経験が必要です。
難しいと感じている新人介護職員さんも多いのではないでしょうか?
本コラムでは、この清拭介助の
■準備・手順
■部位ごとの清拭方法
■注意点
についてわかりやすく解説しています。
苦手意識がある方も、ぜひこちらのコラムを参考にしてみてください。
清拭介助の目的・効果
まずはじめに、清拭介助を行う目的についてご説明します。
清拭介助の目的は体の汚れをとることだけではありません。入浴できない利用者にとって下記のような重要な役割を持っているのです。
清拭介助の目的・効果
・体についた汚れをとる
・ウィルスなどの感染防止
・血行促進
・褥瘡予防
・体に異常はないかの確認
清拭介助に必要な準備
次に清拭介助の事前準備についてです。利用者の体調確認と環境整備、必要な道具の準備をしましょう。■体調チェック
清拭介助を行う前に、まずは利用者の体調チェックです。バイタルサインの測定や声かけで利用者の様子を確認してください。■環境整備
そして、環境を整えていきます。部屋の温度は、暑くなく寒くもない適温を保ってください。室温23~25℃前後がよいでしょう。カーテンなどでしっかりと部屋を囲い、第三者に見えない空間を作ります。プライバシーに配慮して、利用者の尊厳を守りましょう。 ◆清拭介助に使用する道具
以下は、清拭介助に必要となる基本の道具です。前もって用意しておいてください。<清拭介助に必要な道具
>・タオル(何枚か用意する)・熱めお湯(50~60℃)を張ったバケツ・汚水入れバケツ・バスタオル・清拭剤・石けん・ゴム手袋これらの準備が整ったら、清拭介助をはじめていきましょう。 清拭介助の手順
では、清拭介助の基本の流れをご説明します。1.利用者に声かけ
「今からお体を拭いてきれいにしていきますね」と必ず一声かけてかけてから始めましょう。2.拭く部位の衣類を脱いでもらう(脱がせる)
一度に全部脱ぐと体が冷えてしまうので、拭く部分の衣服のみとります。衣服をとった部分にはバスタオルをかけてください。
POINT
顔→耳→首→手・腕→胸→腹→背中→臀部→足→陰部の順で拭く
3.濡れタオルを準備する
タオルの温度に気をつけながら、片手で持てるサイズに折りたたみます。タオルは熱すぎたり冷たすぎたりしないように注意。利用者の体を拭く前に自分の肌(腕の内側)に当てて必ず確認をしましょう。心地よいと感じる温度をキープしてください。
POINT
濡れタオルは固く絞る(ビショビショはNG)
4.清拭する
まずは濡れタオルで拭いていきます。次に濡れタオルで拭いた箇所を乾いたタオルで拭き、体についた水分をとってください。拭き終えた部分はバスタオルで覆います。石けんは基本的に使用しません。陰部清拭のみに使用します。(※清拭のやり方には違いがあります。施設のルールに従ってください。)
POINT
・体が冷えないように手早く行う
・濡れタオルは、一度使った箇所は繰り返し使わない。
折りたたむなど面を変えて使用すること。
5.利用者に気分、体調を伺う
清拭を一通り終えたら、利用者に声かけをしてください。 ・気持ち悪いところ、拭き足りないところがないか ・体のかゆみや痛みがないか ・気分はどうかといった点を確認します。6.必要に応じて保湿する
利用者が塗り薬や保湿剤を使用している場合は、清拭後に必要に応じて塗布していきます。必ず医師や看護師の指導の下で使用してください。7.着替え、身の回りを整える
風邪などひかないよう、すぐに着衣します。ベッドシーツなど室内環境を元に戻して完了です。利用者に水分補給が必要ないかなども気にかけましょう。 部位ごとに解説!正しい清拭方法
では部位ごとの清拭方法について解説していきます。利用者がベッドで仰向けに寝ている状態をイメージして読み進めてください。先述したとおり、拭く順番は顔→耳→首→手・腕→胸→腹→背中→臀部→足→陰部
です。 ■頭
髪・頭皮を洗う場合は体を清拭する前に、先に頭を蒸しタオルで蒸らしておくといいでしょう。
頭を蒸しタオルで包み、上からビニールをかけて覆います。
こうして蒸らしている間に、体を拭いてください。
時間をおいて頭が十分に蒸されたら、ドライシャンプーで髪の毛と頭皮を綺麗にしていきます。
また、頭皮をマッサージをして血行をよくしてあげましょう。
洗髪を終えたら、きれいな蒸しタオルでシャンプーを拭きとってください。
その後タオルドライをして、ドライヤーでよく乾かします。
■顔
清拭はまず顔から行いましょう。
顔はまだ使用していない綺麗なタオルで拭いてください。タオルは毎回拭く面を変えてあげると親切です。
目元、額、鼻、頬、口元と全体をやさしく拭いていきます。
鼻から外に向かって拭いてください。
目元は目頭から目尻に向かって拭きましょう。
もし目やにが固まっていたら蒸しタオルで温めて柔らかくしてから拭き取ります。決してゴシゴシ擦らないように。
■耳
先に耳の後ろを拭いて、次に耳の中を拭きましょう。
耳の後ろは汚れがたまりやすいので忘れず念入りに。
■首
首は縦ではなく横に向かって拭きます。
首はシワとシワの間に汚れや垢がたまりやすいです。
■手・腕
利用者の手首を持ち、手首から腕の付け根に向かって拭いていきます。
こうすることで血行促進につながります。
脇の下、指の間も忘れずしっかり拭きましょう。
■胸
先に胸の上、鎖骨の辺りを骨に沿って拭いていきます。
胸は円を描くように、乳房の周りを拭いていきます。
女性の場合、乳房の下が汗をかきやすく垢もたまるので忘れずに拭きましょう。
■腹
へそから円(のの字)を描くようにやさしく拭きましょう。
脇腹も忘れずしっかりと、こちらは縦に拭いてください。
お腹が弱い方、便秘気味の方は蒸しタオルでよく温めてあげるとよいでしょう。
■背中・臀部
背中・臀部は、体勢を変えて行います。
側臥位(そくがい)という横向きで寝ている状態がよいでしょう。
背中の真ん中から左右に向かって、大きく肋骨に沿うように拭いていきます。
お尻は褥瘡予防のために温かいタオルでやさしく念入りに。
左右それぞれ円を描くように拭きます。
■足
片足ずつ順番にいきましょう。
少しひざを曲げ、足首から足の付け根の方向に拭いていきます。
くるぶし、足裏は後から拭きます。指の間、膝の後ろも忘れずに。
■陰部
陰部のみ別タオルを使用しましょう。
またデリケートな部分であるため、利用者本人が拭ける場合は任せるのがよいでしょう。
先に陰部を拭いて、後から肛門です。
汚れが溜まりやすいので石けんを使用する場合もあります。施設の決まりに従ってください。
清拭介助 3つの注意点
清拭介助の際、特に意識して気をつけるべき点を3つお伝えします。
注意点1|力加減に気をつける
清拭介助は力加減の調整が重要になります。
利用者の肌の状態によって、皮膚トラブルにつながる可能性があります。
また人によって気持ち良さや痛さの感じ方も違います。
力の入れ具合を見極めることが大切です。
注意点2|利用者の体調を優先する
利用者の体調がすぐれない場合は無理に清拭する必要はありません。
よくコミュニケーションをとり、様子をよく観察しながら行いましょう。
清拭介助中も様子を必ず確認し、具合が悪くなったら中止してください。
また食事の前後1時間は控えましょう。
注意点3|体を冷やさないような工夫を
室内の気温、タオルの温度にはくれぐれも注意。
できるだけ日中の暖かい時間帯に行うのがよいでしょう。
また、手際良くスピード感をもって進めることを意識してください。
全身を行うと時間もかかるので、部分清拭に切り替えてもよいでしょう。
まとめ
清拭介助は手際良く素早く、かつ丁寧に行わなければいけません。
それには技術が必要です。
すぐにはうまくできないかもしれませんが、慣れてくると利用者一人ひとりに合わせた力加減や温度がわかってくることと思います。
上記の注意点やポイントをしっかり押さえて経験を積んでいきましょう。
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※掲載情報は公開日あるいは2021年06月17日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。